2021年10月27日

新しい資本主義実現会議(第1回)

 内閣官房新しい資本主義実現会議事務局が、2021年10月26日に開催した「新しい資本主義実現会議(第1回)」の資料を公開しました。
 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai1/gijisidai.html

 新しい資本主義実現会議は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくために設置された「新しい資本主義実現本部」の下、それに向けたビジョンを示し、その具体化を進めるための会議となっています。


 新しい資本主義実現に向けた論点として、以下を挙げています。

○これまでの政府の取組により、経済面での成果が生み出される一方、いまだ低い潜在成長率や、コロナ禍で顕在化したデジタル対応の遅れ、非正規・女性の困窮などの課題、さらには気候変動など経済社会の持続可能性の確保、テクノロジーを巡る国際競争の激化といった新たな構造的課題を踏まえ、我が国が目指していく新しい資本主義の姿は如何にあるべきか。
○成長と分配の好循環について、分配の原資を稼ぎ出す「成長」と次の成長につながる「分配」を同時に進めることが、新しい資本主義を実現するためのカギ。諸課題の解決に向けて、「政府」、「企業(経営者、働き手、取引先)」、「イノベーション基盤(大学等)」といった各主体が果たすべき役割、「国民・生活者」の参画の在り方、官民それぞれが役割を果たす中での協力の在り方とは何か。


 指摘されている諸課題(例)として、以下を挙げています。

○我が国を巡る国際環境の変化
• 国際的にはこれまでの資本主義含めた社会の在り⽅を⾒直すグレート・リセットの議論
• グローバル・キャピタリズムの進展(企業と国家の対⽴)
• テクノロジーを巡る国際競争の激化
• 気候変動など持続可能性を脅かす課題への対応

○産業競争⼒、企業経営
• 我が国産業の稼ぐ⼒、国際競争⼒の低迷、サービス産業の低い⽣産性
• 基礎研究⼒など科学技術⼒の低下
• 企業の⼈材投資が減少
• シェアホルダー(株主)重視、短期の視点に偏り
• 企業経営でコストカット重視の傾向
• 過当競争がみられる市場環境

○マクロ経済
• デフレからの脱却
• ⽣産性・潜在成⻑率の低さ
• 個々⼈のキャリアアップ、成⻑分野への労働移動
• 中間層の伸び悩み(所得・消費)

○⼈の挑戦、活躍
• 不⼗分な能⼒開発機会・働く⼈の意欲
• ⾼齢化、過疎化など社会的課題が各⽅⾯に存在
• ⼥性・若者、フリーランス・⾮正規など多様な⽅々の活躍、低所得世帯・ひとり親世帯等の⽣活の厳しい⽅への⽀援が不⼗分
• 頑張る⼈が真に報われる社会の実現


諸課題を解決していく上で各主体(政府、企業、国⺠・⽣活者等)の役割分担は如何にあるべきかについて、以下の例を挙げています。

○政府
• マクロ経済運営(デフレ脱却、成⻑・分配戦略、賃⾦・所得引上げの促進)
• 社会的共通資本(⾃然環境、社会インフラ、制度資本)の強化
• 危機管理対応(感染症・災害対応、経済安保等)
• 社会保障制度・税制、中⻑期を⾒据えた財政運営(予算単年度主義の弊害是正)等
• 過去の反省に⽴った政策実現(PDCAの徹底)
• 規制・制度改⾰

○企業
• ⽣産性向上(特にデジタル、グリーン等の成⻑分野)、事業再編・新事業開拓などによる付加価値創造型経営への改⾰等を通じた⺠間主導の成⻑
• 中⻑期的視点に⽴ったステークホルダーの利益への配慮・社会的価値の提供(賃⾦・所得引き上げ、両利き経営、⼈材・無形資産投資、働く⼈のエンゲージメント向上、フリーランス・⾮正規等の処遇改善等) 等

○イノベーション基盤(⼤学等)
• 世界最⾼⽔準の研究開発拠点整備
• イノベーションの社会実装の起点
• 教育基盤の確保(リスキル・⾼等教育・理系⼈材)

○国⺠・⽣活者
• 持続可能性の確保・社会的課題解決の担い⼿、潜在需要の顕在化
• ⼥性・若者など多様な主体の参画、個々⼈のスキルアップと挑戦 等


 成⻑と分配の好循環のイメージとして、以下を挙げています。

<成⻑⼒強化・⽣産性向上>経済財政政策
○科学技術⽴国(世界最⾼⽔準の研究環境を形成、デジタル新技術・クリーンエネルギー技術の実装)、起業・スタートアップ促進
○デジタル化による地⽅活性化(デジタル新技術の実装、農林⽔産業の成⻑産業化、観光産業の復活)
○経済安全保障
○成⻑分野の投資強化(デジタル、 カーボンニュートラル)、減災・防災、国⼟強靭化デフレ脱却の実現(貯蓄から投資へ、⾼い潜在成⻑率の実現)
○規制・制度改⾰

<次の成⻑に向けた分配>経済財政政策
○分厚い中間層の構築(看護・介護・保育等の現場で働く⽅々の賃⾦・所得引き上げ等を通じた、旺盛な消費を次の成⻑につなげるサイクル構築)
○政府の機能強化(教育費等の⼦供・⼦育て⽀援、格差の固定化防⽌、⼤企業と中⼩企業の共存共栄の環境整備(下請け取引への監視強化))
○安全・安⼼を消費へ(勤労者皆保険の実現など全世代型社会保障の構築、持続可能な社会保障)

<成⻑⼒強化・⽣産性向上>企業経営・社会の再構築
○「稼ぐ⼒」の強化による⺠間主導の成⻑(⽣産性向上を通じた国際競争に打ち勝つ産業の創出、コストカット重視の経営から付加価値創造型へ、事業再編も含めた経営・事業体制の⼤胆な改⾰、ウィズコロナの事業再構築)
○「⼈」重視の経営

<次の成⻑に向けた分配>企業経営・社会の再構築
○「三⽅良し」のステークホルダー重視(賃⾦・所得引き上げによる⺠間における分配、働く⼈や中⼩・下請け企業への配慮)
○⼈への投資、職業訓練・雇⽤慣⾏の⾒直しによる主体的なキャリアアップの促進
○⼥性・若者などの活躍、フリーランス、⾮正規等の待遇改善


 参考資料(データ集)では、以下概要が記されています。
○経済⾯での成果: デフレ状況でなくなり、GDP・企業収益・雇⽤⾯は、改善。
○潜在成⻑率と無形資産投資の現状: 潜在成⻑率は、伸び悩み。⼈材投資を含む我が国の無形資産投資は、主要国では、低い⽔準。
○賃⾦・所得の現状: 総雇⽤者所得は、コロナ禍までは、名⽬・実質共に上昇。
○⾜下の⽇本経済の状況: コロナ禍以降、⽇本経済の成⻑⾒通しは、主要国に⽐べ、弱い。⾜下では、エネルギーコスト上昇の影響に注意が必要。
○企業による設備投資・研究開発の状況: 企業は⾼⽔準の現預⾦が蓄積されているが、主要国に⽐べ、経済成⻑率への資本寄与は⼩さく、研究開発費の増加も⼩さい。
○企業の現状: 我が国企業のマークアップ率は、低い。開業率や⼤学発ベンチャーの活動も、IT企業が⼤きく成⻑する⽶国と⽐べ、低い⽔準。
○⽣産性向上と⼈材投資の状況: 付加価値⽣産性の伸びが⾼まっているものの、主要国よりも⽔準は低い。特に、サービス業の⽣産性に、⽇⽶間で格差。企業による⼈材投資も主要国と⽐べ、低い。
○科学技術⼒の現状: 我が国の国際競争⼒や科学技術⼒は、低下。イノベーションを⽣み出す科学技術⼈材の育成が課題。
○企業による社会的課題への取組: 企業による社会的課題への取組が内外で拡⼤しているが、我が国では更なる取組の余地。
○中間所得層の現状: 中間所得層の割合は、G7の中では、⽇⽶独加において低下。我が国では、賃⾦カーブのフラット化や⾮正規労働者の増加も影響。
○若者・現役層の家計の現状: 20・30歳代は、⾦融資産が少ない。また、教育費が消費を抑えている可能性。
○⼥性活躍の現状: 男⼥間の賃⾦格差は、依然として存在。⼥性の就業継続や管理職⽐率の引上げが課題。
○経済的困難に直⾯する世帯の現状: ⺟⼦世帯が多くを占めるひとり親世帯は収⼊⾯で困難に直⾯。コロナ禍での所得減は⾮正規労働者世帯に⼤きな影響。⽣活保護世帯の⼦供は進学⾯でも⼤きな格差。


 現状については、多かれ少なかれ、資料に記載されている内容になっている気がします。問題点は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していく方法になるかと思います。

 個人的には、以下の具体的対応が必要になるかと思います。
○毎年変化する複雑な税制の簡略化
○企業が行政の代わりに行っている税制行政作業の負荷軽減
○全国同一労働同一賃金による全国一律の最低賃金設定(各都道府県主要都市のコンビニで働く方がそれぞれ異なる労働を行っているとは思えません。)
○受注生産という名前の見込生産によるコスト増の問題解決
○全世代への教育投資施策実施
○他国との学術協力と科学研究の合意(ハンガリーとモロッコ王国が実施した事を参考にするのが良いかもしれません。)

 可能ならば、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくための具体的な方法について、多くの国民から意見やアイデアを募り、実現可能な物から実施していくのが良いかと思います。
posted by Auctor at 00:14 | Comment(0) | 時事ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする